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まけっと -ねぎしけんちくスタジオ展-

建築模型

建築模型は、完成された建築物にも劣らない魅力があり、別次元の自律した建築として、大いに価値のある創造物である。

 

建築/模型

建築設計事務所における建築模型の役割は多岐にわたる。

設計のための試行ツールとして、全体計画から部分の詳細に至るまで、あらゆるスケールの模型によって検討を重ねることで設計者の想像力を拡張し、計画の密度を高めるために重要な役割を担っている。また、クライアントへのプレゼンテーションや、打ち合わせにおける情報共有のためのコミュニケーションツールとしても、図面では不十分な建築物総体の把握に役に立つ。しかし、これらの役割は、実際の建築物ができるまでの過程に生まれる副産物としての価値に留まる。

建築模型の本質的な価値は、設計者のアイデアが様々な工夫により表現され、具現化したものであるということではないだろうか。それは、建築物の具体性を排除し、要素を限定した模型表現によって示される最も抽象化された建築物の姿でもある。また、色や素材、スケールや大きさなどに施された様々な工夫は、模型に宿された建築家の意思ともいえる。何度も修繕された模型に残された糊の跡やカッターの傷は、設計者と模型の対話の記録であり、その試行錯誤の痕跡によって建築家の思考を追体験することができる。

それらの集合体である建築模型は、建築家の意図を直接的に反映させた建築の無垢な状態ともいえるだろう。

 

模型/展示

本展示では、建築物を解説するための写真や図面、文章のような媒体は存在しない。建築物の計画過程から切り離された建築模型が、一つ一つ独自の情報を有しながら、自律した展示物として置かれている。

建築模型は作り手の意図を離れ、他者の目によって新たな想像世界を生み出す。一つの模型の中に自身を入り込ませて空間体験をしても良いし、模型同士に関係性を発見したり、その周囲に新たな空想世界を想像してもよい。展示物周辺の状況によってさまざまな見立てがうまれ、展示を見る目によって多彩な世界が創造されるだろう。

 

展示/建築

展示物は数カ所にまとめられ、小さな島を形成している。はじまりは、この複数の小さな島の環境から。

参加者は、カフェのドリンクとともに配られる小さな建築模型を展示会場のどこかに置いていく。小さな模型は展示物や展示空間と共鳴しながら増殖していく。

展示会期が終わる頃には、会場全体に広がる無数の模型たちが一つの大きな環境を形成し、そこに、あらたな空間的秩序が生まれる。他者の参加によって成長する展示会場そのものが、空間との対話によって作られた大きな模型作品であり、建築的思考のもとに現れた空間作品でもある。

 

まけっと

あらためて建築模型とは、作り手の思考を直接的に具現化した建築として、魅力にあふれた創造物である。

“まけっと”とは、建築模型を作る(参加する)ことで得られる学びのことである。

本展示の本来的な目的は、展示物を見た者の想像力に働きかけることではなく、“まけっと”を通して、他者とともに新たな建築的な可能性を発見することにあると考えている。

建物概要

期間 :2022.07~2022.08

内容 :ギャラリー企画展​

場所 :群馬県桐生市本町1丁目 ギャラリー象

担当 :根岸陽,大里謙,爲我井雅揮 

​写真 :早川記録/早川真介

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